aircolor memolog

Web制作・テクノロジー、たまに旅行記

Webデザイン雑誌が消えたのはいつからだったか

そういえば最近Webデザインの雑誌をめっきり見なくなったなぁ、という感想と雑談。

とおっしゃられているように、最近Webデザインに特化して紹介している雑誌を見かけなくなりました。今でも老舗のWebデザイン誌「Web Designing」は発刊されていますが、昨年紙面の方向性を大きく変え、デザイン・クリエイティブ寄りではなく、ECコマースや運用・戦略に寄った記事構成となりました。紙面後半に申し訳程度に乗っているクリエイティブ寄りな記事にその痕跡を見ることができます。同じようによく見ていたMdNはもともとWeb系の記事はそれほど掲載されていませんでしたが、今では完全にエンタメ・アニメ系のデザイン紹介雑誌になっています。

昔存在した雑誌(知ってる限り)

代表的なものとして以下のような雑誌がありました。「Web Creators」と「Webデザインノート」は目に入るぐらい読んでいた記憶があります。しかしどの雑誌も2010年を境にほとんど消えていたことがわかりました。

Web Creators(ウェブクリエイターズ)

MdNが発刊していたWebデザイン誌。この雑誌が同時に発刊されていた当時の「Web Designing」は純粋にデザインに特化した紹介記事が多かったですが、この雑誌はその対局でパーツの作成方法やCSSFlashJavascriptなどのテクニック紹介に比重を置いていました。スタークリエイターが紹介しているテクニカルな記事と実績を見て、一人唸っていた記憶があります。2010年の第101号で休刊。休刊からもう6年も経つんですね…

なおWeb版はまだ存続しています。 http://www.mdn.co.jp/di/contents/webcreators/

Webデザインノート

「デザインノート」で有名な誠文堂新光社が発行していた雑誌。デザイナーに焦点を当て、クリエイティブに寄った記事が多かった記憶があります。不定期刊行でしたが2008年号が最終だそうで。意外と短い刊行期間にびっくりしました。

Web STRATEGY(ウェブ・ストラテジー

この雑誌はあまり見ていなかったのですが、MdNが刊行していたもう一つのWebサイト雑誌で、企画・戦略に寄った記事を掲載していた雑誌です。2009年のVol23号で休刊になっています。

なぜ衰退したかを考えてみる

WebのクリエイティブジャンルがWebサイトに限定されなくなった

昔はWebといえばWebサイトのことを指し、各人競い合って新しいデザインやテクニックを披露していました。それがスマートフォンタブレット、果てはアプリケーションやIoTといった幅広い分野に広がり、一つの分野に才能が集約しにくくなったことが挙げられるのではないか、という予想。

Web上でのデザイン紹介メディアが増えた

古くはデザインウォーカー、最近でも精力的に更新されているWebクリエイターボックスコリス、 など各雑誌の刊行登所と状況が変わり、様々なデザイン紹介メディア・ブログが登場し、スピーディに情報を配信できる世界になりました。雑誌を必要としなくなった大きな理由の一つかと。

Webデザインの激しい変化に対応できなくなった

大学生(2007年ごろ)の頃のWebを振り返ると... 当時はWebデザインのルールやセオリーがまだまだ確定しておらず、総じて緩かったです。デファクトスタンダードやルールに縛られない、オリジナリティあふれるサイトが乱立していました。 計測ツールがまだ浸透していないこの頃、Webサイト制作においてどうやって差をつけるのか、商材としてのサイトを売り込むのに重要な要素は「デザイン」でした。オリジナリティを出すために高度なアニメーションを実装したリッチなサイト(Flashが主)、パーツディテールやタイポグラフィにこだわったサイトが続々とリリースされていきました。言い換えると今よりもディテールとしてのデザイン(UXとかではなく)に求められる役割が多かった、ということになるのかなと。

今現在はというと、使いやすさやコンバージョンを意識したコンテンツ本位のデザインの需要が高まっています。アクセスや到達率などを数値解析できる時代となり、裏を返せばよりデザインに対して結果を求められるシビアな時代になってきました。よりユーザビリティを重視したデザインが求められる反面、パーツやグラフィカルな表現でオリジナリティを出すデザインを求められる機会は減少しています。

Webデザインに求められる方向性が変わり、「結果の出せるWeb制作」を軸に記事構成を変更する、という「Web Designing」の方針変換は至極合理的です。その転換期で方針をうまく変えられず、部数を落とし続けていった雑誌が消えていき、気づいたらほぼ全滅していた、という仮説。

さいごに

と、分析半分ポエム半分といった具合の記事となってしまいましたが。 あまり昔のことを話し過ぎると懐古厨と言われそうで怖いです(汗

余談ですが、雑誌から得られたのはテクニックやデザインの情報だけではなく、実力のあるデザイナーやエンジニアの方々の情報もです。yugop.com中村勇吾さん(現:tha代表)やRAKU-GAKIの西田 幸司さん(現:nirnor代表)の存在を初めて知ったのは「Web Designing」で、ungraffiの池田智道さん、artlessの川上俊さんを知ったのは「Web Creators」です。 同じ業界のスタークリエイターたちを知ることは楽しかったし、自分の目標とすることができました。こういった記事を見ることで業界に夢が見れた方は多いと思うのです。

現在はWebサイトに限らない、広範囲なジャンルで尖った才能を発揮している人がちょっと探すだけでゴロゴロしているのはわかりますが、業界の誰もが見ている雑誌や媒体が不在な気がします。Webサイトに限らない、クリエイティブなWebを紹介した媒体が、季刊や不定期更新でもいいから出ないかなぁ、と現状を見るに思った感想です。